世界と日本のサステナブル事情 – ものづくりの現場・工場内での違いや暮らしの中での違い
組み込み型のものづくりサービス〈Printio〉は、ただいま北欧出張中。北欧でのものづくりの現場である工場を見学させていただいたほか、北欧に3週間滞在したので、本ブログでは、改めて「世界と日本のサステナブル事情」として、工場内での違いや暮らしの中でのサステナブルに対する考え方や目線の違いをご紹介します。
出張記録や工場見学の様子は、note『北欧PrintOnDemand工場見学ツアー/ノルウェーのデジタル専門工場をみてきた』や『北欧PrintOnDemand工場見学ツアー/アパレルを始めたばかりのスウェーデンの大手工場』に載っていますので、そちらをご覧ください。
〈Printio〉を運営する、株式会社OpenFactoryの代表・堀江のnoteより
目次
工場で感じる「サステナブルな社会の実現」
ものづくりは、いつだって現場で行われています。今回訪れた工場は、どこも「POD(プリントオンデマンド)」と呼ばれる領域を実践している「デジタル印刷機」を駆使した工場でした。
……ちなみに、記事『世界と日本のプリントオンデマンド事情 – 市場規模や考え方の違い、共通点とは』にて、グローバルのPOD事情は詳しくご紹介しています。そちらも合わせてお楽しみください。
デジタル印刷機はサステナブルなので積極的に導入
工場見学に招待してくださったのは、ノルウェーの都市オスロから車で3時間の場所にある大型工場でした。取り扱い領域は、書籍やポストカード、大きなポスター、ステッカーにTシャツと多岐にわたります。加工方法も、箔押し、リング綴じ、型抜き、フィルム転写……とさまざま。
そんなノルウェーの大型工場の特徴は、全機械が「デジタル化」されていたこと。伝統的なオフセット印刷やスクリーン印刷というようなアナログな機械は数年前にすべてデジタル機に変えてしまったとのことでした。また、工場では積極的に環境の認定も取得しているようでした。
デジタル化の理由は、新しい仕事に向いていることのほかに「サステナブル」であることも挙げられていました。廃水も出ず、無駄もおきない、人手を介して行わなくても自動化もしやすい。日本でも、デジタル機を積極的に導入している工場はありますが、すべてを置き換えている大型工場は本当に限られています。
労働者の権利を考える。夜勤が続いたら金曜日はお休みに
北欧には、労働者の権利や労働時間の管理も法律で細かく義務付けられています。日本でいう三六協定のようなものです。
工場勤務も例外ではなく、〈LOS DIGITAL AS〉では朝シフトと夜シフトの2シフト制を導入したうえで、夜シフトのメンバーには金曜日からお休みを与えているのだとか。夜勤が続いたら、休みも増える。労働者の権利も考えられたシフト制作です。また、残業の考え方や捉え方も大きく違い、基本的には勤務時間内に収まる範囲で働くのが習慣化しているようでした。
日本でも、三六協定を基に、残業を減らしたりノー残業デーを設けている工場はありますが、金曜日を休みにするというのはまだまだ珍しいかもしれません。労働者の働き方を考えるのは、作業効率を見直すきっかけになるだけでなく、気持ちよく働けるからこそ生まれる好循環へともつながります。
個人情報保護のためカメラを用いた検品はNG
「児童の写真なども含まれる“フォトアルバム”の領域では、検品でカメラを使えないんだ」と教えてくれたのは、一緒に工場見学に参加していたヨーロッパのフォトアルバム工場のオーナーでした。
日本の多くの工場では、機械での正確な検品を行うほどのデジタル化や検品への投資ができていないため、目視や触診での検品が行われています。ですが、“フォトアルバム”の領域は勝手が少し違い、ページごとの内容の整合性やパーソナルな領域であることもあり、カメラを使った機械検品が一般的です。
ですが、ヨーロッパの法律では、検品時のカメラの使用も「データを工場内に残してしまう」という点で使用を禁じているのだとか。検品作業と思うと難易度が上がり手間もかかり苦しいカメラの不使用ですが、一人ひとりのプライバシーや権利、と思うとこれはこれで必要な考え方なのかもしれません。
生活の中でも感じられる「サステナブルな社会の実現」
工場の中だけではなく、暮らしの中でも「サステナブルな社会の実現」への興味関心の高まりを感じることが出来ました。滞在中に感じたことを中心にいくつかご紹介します。
アップサイクル品(リサイクル品)の流通の多さ
北欧には、「セカンドハンド」と呼ばれるアップサイクル品(古着・古物=リサイクル品)が売られているマーケットが街中のいたるところに存在します。そして、それらのリサイクル品は、古着好きの一部の人ではなく、老若男女さまざまな人が利用されていました。週末の公園には、個人によるフリーマーケットも多数散見出来ました。その内容は、日本でいう「メルカリに出展するような日用品」が近いかもしれません。購入者も特別な蚤の市にあそびにきた、というよりかは日常生活の中で立ち寄る場所のようでした。
アメリカでも「ヤードセール(前庭で行うセール)」や「ガレージセール(駐車スペースで行うセール)」と呼ばれる家庭単位で行うフリーマーケットが週末の度にどこかしらで実施されていますし、日本でも〈メルカリ〉の登場によりセカンドハンドマーケットが浸透してきてはいますが、文化としてのアップサイクルを採り入れている街であることが非常に感じられました。
人間の暮らしだけではない、生き物たちの暮らしへの配慮
スーパーで販売されている食べ物も、レストランで食べられる料理にも、非常にヴィーガンフードが浸透していました。また、肉製品や乳製品では「牛の暮らしに配慮をして製造したアイテム」であることがうたわれている場合も多く存在しました。
また、カフェの中にも犬がいて、犬同伴で入れる店や場所が非常に多く、一方野犬や街猫は少なく、人間の暮らし以外の地球上の生物への暮らしを配慮している様子がうかがえました。
ガソリン車ではなく、電気自動車がたくさん
ガソリンを使わない、電気自動車の普及も進んでおり、日本では約0.88%に留まる電気自動車率がヨーロッパでは9.1%(ACEA「Fuel types of new cars: battery electric 11.9%, hybrid 22.6% and petrol 37.8% market share in Q3 2022」より)と高水準です。アメリカでも電気自動車の普及率は9.5%(全米自動車ディーラー協会「NADA DATA 2021」より)なので、日本の普及が進んでいない、というのが現状かもしれませんが、北欧では、中心都市のみならず、人口6万人の地方都市を訪れても電気自動車用の充電スポットが多くあり、電気自動車も多く走っていました。
多様な人と共に暮らしていく社会を感じる個人運動
街を歩いていると、多くのマンションの窓や玄関にレインボーフラッグが掲げられたり、ブラックライフマターを訴える看板が個人宅に置いてあったことも印象的でした。フィンランドでは、政府主導のLGBTQ-infoMAPが街中で配られており、一人ひとりの権利を考えること自体が生活の中に根付いているのを感じました。
少し話はそれますが、欧米を中心に普及の波がひろがる「Discord(ディスコード)」というアメリカ発のチャットサービス内にあるコミュニティでは、多くのコミュニティガイドに参加者一人ひとりのもつ権利の話が盛り込まれています。また、旧来の二人称である「She/Her」「He/His」に加え「They/Them」という性別を問わない代名詞を希望する仕組みが採り入れられている場合もあり、フォーマルなやり取りだけでなくカジュアルな日常会話・オンライン上でのコミュニケーションでも持続可能な社会をみんなで目指そうという姿勢が多く見受けられます。〈Printio〉でも、PODを学ぶコミュニティをDiscord上で立ち上げました。PODにまつわる新着情報などをシェアしておりますので、よければ、ぜひご参加ください!みなさまのご参加、お待ちしております!
Printioの取り組む「サステナブル」
〈Printio〉でも、サステナブルな社会の実現に向けて私たちが実現できることを常に考えています。つくり手にとってもつかい手にとっても、心地よく、社会にとっても嬉しい世界を目指してサービスを運営中です。〈Printio〉で実現するサステナブルな社会については、こちらのページからご覧いただけます。
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